フクロウ谷訪問記                     

2002年12月14−15日(土、日)

動物写真家、宮崎学さんがフクロウの撮影をしているスタジオを開放して下さるというのをHPで知り、行ってきました。
宮崎さんのことは私が説明するよりこちらをご覧下さい。
私が高校生だった20年以上前、平凡社から出ていたアニマという雑誌で宮崎さんの写真を見ていました。その後、写真集が出るたびに購入していました。

インターネットをはじめるようになり、宮崎さんのHPを知り、掲示板に発言したり、逆に私のHPにコメントを下さるようになりました。2002年6月には長野県豊科町であった講演会とオフ会にも参加させていただきました。
今の私に多大な影響を与えた動物写真家、本人曰く、自然界の報道写真家とこういう付き合いをさせていただくようになるとは思っても見なかったことです。通信技術の進歩のおかげです。

ちなみに私のHPにある、テンとハクビシンは宮崎さんからいただいたものです。

暖冬の予想に反して寒い日が続き、チェーンも用意し、付ける練習もして長野へ。参加者は私が声をかけたオオサンショウウオ仲間とHPを通じて知り合った方々でした。
天気が非常に良く、午後1時前には宮崎さんのオフィスに到着しました。近所を少し散歩していると宮崎さんから連絡があり、オフィスで少しお話を伺ってから現地へ行きました。

小さな集落から山に入り、雪の積もった林道のようなところを登ります。途中のカーブで、崖崩れのために木が倒れ込んでおり、その木をどけるためにチェーンソーで木を切り道を開けました。
写真家といっても道を作るところからはじめ、観察小屋を立てて電気を引っぱり、開拓者と同じですね。このあたりのご苦労も宮崎さんの著作に出てきますのでそちらをお読み下さい。

チェーンソーで一仕事。

カーブを曲がると出てきたのが木の ”ほったて小屋” 。
ノスリ?オオタカ?の巣にビデオカメラとスチールカメラをセットし、ここに何日も泊まって観察と撮影をしていたそうです。
小屋の中には生活用の鍋釜やモニター、配線、スイッチ類が残されていました。部屋の内部には何時に巣に帰ったか、等のメモ書きがいっぱい書かれていました。

宮崎さんと、説明を聞く参加者。 この中にフクロウの営巣木があるそうです。

ここを上り詰めるとフクロウ谷を見下ろす観察小屋に着きました。
昔は谷に切り開いた田んぼがあったそうです。植林されていた木を整理して雑草を抜き、観察しやすいように枯れ木を立てています。
”最盛期”はこの谷にカメラを数台(以上)セットし、止まり木ごとにセンサーをセットし、何時に、何回、どの木に止まったかまで記録していたそうです。そのための配線が巡らされているそうです。谷にあった作業小屋に電線や古い三脚類が無造作に置かれていてその当時の様子を少し垣間見ることが出来た感じです。

「フクロウ」の写真集が作られた現場に立つことができて感激でした。

フクロウ谷全景。左側に観察小屋。右奥に止まり木があるのがわかります?

作業小屋の宮崎さん。道具がいっぱい。 フクロウから見た観察小屋。右は昔の小屋。

観察小屋にもどり、日暮れを待ち、フクロウの出現を待ちます。観察用のライト2灯に止まり木が浮かび上がっています。100%出てくる、との宮崎さんの話どおり、予想より遅れましたが最初に奥の止まり木、ついで手前の止まり木に止まってまわりを警戒しながら首をキョロキョロしていました。
しばらく保護していたアオバズクよりずっと大きく見応えのある鳥でした。

観察小屋からの眺め。肉眼ではしんどい。これはナイトショットで撮影。
フィールドスコープなら表情もしっかりわかる。

しばらくフクロウを見せてもらったあと、宮崎さんを囲んでの食事。寒いし、コンビニ弁当より鍋でもしましょう、ということで宮崎さんが午前中に買い出しに行って下さっていたのです。食事をしだすとそちらに話が弾み、フクロウそっちのけで食事とお酒、でした。

ベッドで宮崎さん自ら調理中。 いっぱいやりながら鍋の御指導。

少し時間が逆戻りですが、この日の夕方到着後、宿泊の準備をしつつ小屋付近で話をしているとシジュウカラがやけにうるさく回りを飛んでいます。宮崎さんによると小屋の後ろのコンクリートの壁にある排水用パイプに帰りたがっている(そこで寝るために)のではないか?との事で、じゃまをしないようにしばらく全員で小屋を離れました。
食事後その穴をのぞいてみるとやっぱりシジュウカラが寝ていました。

ほんとに小さな、短いパイプですが。

向こうを向いている。真ん中に黒い尾羽、
その上左右に初列風切り。
約30cmの深さの穴。
カメラを構えると照明が当てられず苦労した。
結果、ピントが合わず、でした。
こっちを向いているんですがわかります?

翌朝、小鳥の声を聞きつつ、昨日の余韻に浸りながら朝食を食べてフクロウ谷をあとにしました。途中でオオタカの巣を見せていただいたり、以前に宮崎さんのgaku日記に載っていた、”アオダイショウのイワツバメ定食” の現場を見せていただきました。イワツバメが高速道路の橋の下に巣を作ったところ、アオダイショウがどうやって垂直の壁を登ったのかわからないですがイワツバメの巣に入り込み、何ヶ月も住み着いて、端から順番にヒナを食べていったそうです。アオダイショウは鳥が大変好きなようですね。庭にぶら下げていた鳥かごにヘビが入り込む話は何回も聞いたことがあります。鳥もそれを考えて余裕を持って(?)複数のヒナを育てるのでしょう。

言われればわかるけど、ボーと眺めているだけでは見つけられません。

左の巣はダニの発生で現在使用していない、とのこと。右も入居率は1割以下?らしい。

帰る途中で橋の上で宮崎さんの車が停車しました。天竜川にオシドリがいるはず、と言うことで、探すとはるか向こうにいました。あんな向こうの鳥をよく見つけられるなあと思っていたら、さらに離れたところを見て「ヤマセミがいる」、とおっしゃいました。フィールドスコープで確認すると(当たり前ですが)確かにヤマセミでした。私の肉眼では白っぽい点にしか見えませんでした。横の木にはノスリが何気なく止まっています。伊那谷の奥深さをたったこの1カ所で見せつけられました。

当方に送ってくださったテンの死体を見つけた現場も見せて下さいました。何の目的の水路かわかりませんがすごい勢いで水が流れていました。全くの3面コンクリートで道路までの深さも深く、いったん落ちると人でも登るのがしんどそうです。実際、ありとあらゆるほ乳類がここで死んでいるそうです。両生は虫類、昆虫まで考えると流れてしまった命は数知れないでしょう。

生き物トラップと化した水路。 この森にもオオタカの巣が。

再び宮崎さんのアトリエに戻り、お話をいろいろ伺いました。宮崎さんご推薦のそば屋さんで早めの昼食後、駒ヶ根をあとにしました。
結局、まる24時間おつきあい下さった宮崎さん、ご同行下さった参加者の皆様、たのしい観察会を、たいへんありがとうございました。



観察会の当日、信濃毎日新聞社がその取材をかねて宮崎さんのところへ来ておられ、後日、取材記事の掲載された新聞が送られてきました。記事は1ページまるまる使い、フクロウの写真も掲載されていました。とりあえず参加者の写真を掲載します。