野鳥カルテ
2001年 9−12
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2005年 1−3 4−6 7−9 10−12
キジバトのヒナ 12月18日
ミネちゃん、帰る 11月30日
ミネちゃん、ウミネコです 11月20日
久しぶりのスズメ 10月29日
釣り糸3例 10月19日
ヤブサメ でした 10月11日
ゴイサギの上腕骨骨折 10月1日
カラスの中手骨骨折 10月1日
ユビナガコウモリの中手骨骨折 9月23日
ハシブトガラスの巣立ちヒナ
羽のいたんだアオサギ
鳥のコピー
キジバトのヒナ(2001年12月18日 掲載)
*先に書いておきますが写真を撮るのを忘れていました。すみません。*
12月8日、10日と、キジバトのヒナの持ち込みが続きました。
8日のは搬入直後に死亡、10日のは逆にすごく元気でひょっとすると誘拐?近くに親がいないかどうか、確認するように伝えて保護者に”返品”しました。
キジバトはこんな時期にでも結構繁殖するそうです。
キジバトだけかと思っていましたら博物館関係のMLに、カイツブリ、バン、マガモ(の雑種)、カワウの冬の繁殖について報告がありました。
そういえば
昨年11月14日、病院に来たら箱の中にいました。体重65gと110g。
一つは12月5日に死亡しましたがもう一つは21日に放鳥しました。
キジバトと思って育てたのに、どんどん大きくなり、大人になるとドバトになっていました。
飛ばしても肩に帰ってくる手乗りドバトで、放鳥した公園でもドバトの群れに入れず、一人でたたずんでいました。
みんなと仲良しになれたのでしょうか。
ミネちゃん、帰る (2001年11月30日 掲載)
11月6日から保護していたウミネコのミネちゃんを大和川で放鳥しました。
ユリカモメ、カモメ等で有名なところです。
早く帰りたいなあ | 久しぶりの空 | 水浴び中(゙スコープにデジカメをつけて撮影) |
風があると飛びやすい様です。うまく風に乗って友達に合流、最初はずっと身繕いをしていました。やはり長期に飼育する場合、プールのような施設も必要なのかもしれません。大きめのバットを入れたこともあるのですが、その時は入らなかったので以降、試しませんでした。以前、オオミズナギドリを保護し、放鳥したら水に浮かばず、体の大部分が沈んでしまったことがあります。プールまで用意する余裕もないしなあ。
なお、ミネちゃん、追跡調査のため頭頂部に赤いマニュキアで印をしていますが内緒です。大阪府の担当部署に聞けば足輪、マーキングは普通種であれば、合理的な理由があれば認めてくれそうです。今回は間に合いませんでしたが組織的に足輪等を準備して放鳥後の追跡をしたいものです。
おまけの写真
大和川のユリカモメ。エサによってくるのは若鳥が多いのかなあ。
この日は足輪付き、一つを発見しました。
ミネちゃん、ウミネコです (2001年11月20日 掲載)
11月6日、とある大阪府の施設から電話があり、”臨海工業地帯の工場でカモメがうずくまっている、との連絡があったのでそちらへ搬入したい”、との話、楽しみにしているとウミネコがきました。
ちょっと見にくくてすみません。足先に釣り針が刺さり、それにつながるテグスが嘴、羽にからんで飛べなくなっていたようです。以前のセグロカモメと同じパターンでした。
糸をはずして翌日放鳥のつもりが
(左は保護直後、右端は11月19日、ストーブにあたるシーナとミネちゃん、羽は治りつつある。)
羽を下げて動かしません。
レントゲン、触診では異常なかったのですが関節を痛めたのでしょうか。
とりあえず様子を見ていると、1週間目あたりから羽を動かすようになり、最近(保護後2週間目)は左右同じ感じで羽をバタバタし、飛びそうな雰囲気も出てきました。
羽と反比例して足がだんだん腫れてきてビッコをひいています。まあ、足だけなら生きていくのにあまり支障はないでしょうし、今日はちょっとマシのようでした。
食事はイワシ、アジを与えています。かなり大きな魚でもそのまま丸飲みします。先に内臓をつついて食べるときもあるようです。アジの方が好きなようです。
犬舎掃除の時に院内を散歩、掃除が終わると”ハウス!”の号令とともに犬舎に帰ります。
いわゆる三泊眼で目つきはカモメほどよくないですが、しばらく飼うとかわいいもんですねえ。
このサイズの鳥になると飛べるかどうかの判断が難しい。今日は羽ばたくと、いくらか地面から浮いていたので、野外で風を利用すれば飛べるようにも思うのですが。あるいは足にヒモを付けて空き地へ行くか。
いずれにしても、もうしばらくは病院に泊まっていただきますので,、お友達になりたい方はどうぞいらして下さいませ。
久しぶりのスズメ (2001年10月29日 掲載)
前を走っている車に巻き込まれた、と、スズメが持ってこられました。ひかれたら煎餅でしょうが幸か不幸か大腿骨の骨折だけで命には別状なさそうでした。
骨折部を羽ごと固めてギプスの代わりにしました。数日間、様子を見ましたが残念ながら指が動きませんでした。足先は痛みも感じないようで、神経が切れてしまったようです。
チュンチュン跳ねるだけやったらまあ、生きていくのに支障はないか、と思い、放鳥しました。
スズメは地味ですがかわいいですねえ。
釣り糸3例 (2001年10月19日 掲載)
ドバトの例です。口から釣り糸が出ていました。その時の写真は残念ながら撮りませんでした。
糸が出ていると引っぱりたくなるのが心情ですがもちろん危険です。
レントゲンで針の位置を確認、針先を外部に出して直線部分をカットすればOKです。(もちろん糸側は口から出す。)
とある本に、「糸にビニールのチューブをかぶせて送ってやると、最終的に針にもビニールのチューブがかぶせられ、食道、内臓を傷つけないで外部に取り出すことが出来る」と、書いてあり、その時はなるほど、と、感動しましたが、うまくいった試しがありません。釣り針のカーブで引っかかるようです。
さわって針の位置が確認できれば外へ取り出す方が早いし安全でしょう。
6月20日に市役所を通じてやってきました。
保護された場所は住宅地の真ん中にあるけど抽水植物や浮き草があり、冬にはカモが結構入る池です。
写真の通りの状態です。来た時点で皮膚5mmほどがつながっていただけで、処置はハサミでチョン、で終わってしまいました。
痩せていなかったし元気そう、足を落とした後でも普通に歩いていた、ということは、片足でも、足がこの状態になるまで長期間生きていたということでしょうから放しても問題ないと判断、そのまま放鳥しました。
マスコミにいえば飛びつくかなあ、とも思いましたが、そもそもこの鳥は?
アイガモでしょうからペットですよね。どう考えても野鳥ではありません。
アイガモはカルガモ、マガモとの交雑が心配されている鳥です。純粋な野生のカルガモは存在しないのではないか?といわれるぐらい交雑が進んでいるといううわさもあります。
この池には他にもアヒル数羽、アイガモ、マガモ?も数羽いますのでまあ、この子を放しても放さなくても同じ事か、と判断しました。
その後どうなったか、見に行こうと思いつつ何カ月もたってしまいました。
そういえば、この池には断翼したカルガモも放鳥しました。この時はその後何回か見に行ったのですが再会は果たせませんでした。
12月、「学校でなんかわからん大きな鳥をひらった、カモかなあ。」と息子から電話がありました。昔からとにかく何でもひらうように”しつけて”あるのでスズメのヒナ(誘拐という方もおられますが)とか鳥の死体、アオダイショウなどをよく見つけてきます。
中学校の校庭で見つけたといいますが、隣には養魚池があり、カモが来るのでカルガモかなあ、と思いつつ帰ってみると、なんとセグロカモメ。
何を考えて中学校まで来たのでしょう。ロシア(?)から日本語を学びに?
羽に釣り糸がからんで飛べなくなっていました。なんとか川までもどろうとし、途中でがんじがらめになり、池を見つけてとりあえず不時着しようとしたのでしょうか。
それにしてもこんな大物が町中に落ちてるとは。
鳥より、私のうれしそうな顔をご覧下さい。
こうやってみると、大物の魚を釣ったときとおんなじ感じですね。
2日ほど病院で休んで頂いた後、カモメで有名な大和川へ放鳥しました。
大和川は冬鳥の観察、ユリカモメの足環探しにしばしば通っているので個体識別できるかと思い、たまたま病院にピンクのマニュキアがあったので嘴をピンクにして放鳥しました。が、色落ちしたのか、その後の観察ではマニュキアカモメにはあっていません。
ヤブサメ でした。 (2001年10月11日 掲載)
9月25日に ”うちのネコがまた、ヒナを連れてきました。” と、患者さんが連れてこられました。
このネコは動物愛護にたけたネコで、しょっちゅう野鳥を連れて帰っています。大きいのではキジバトのヒナも連れてきました。
今回はこの子。瀕死の状態で来院後まもなく亡くなりました。
で、この子の名前は?
この時期、メボソムシクイがよく落ちるので最初はメボソかなあ、と思っていましたが、雰囲気が少し違います。
体重9.1g 全長94.1mm
雰囲気的にはヤブサメくさい。
ムシクイ類は手にとってもよくわからないのに、皆様よく野外で区別されますね。
もっとも、生きてる方が色とか鳴き声、行動でわかりやすいのでしょうか。
仮剥製にして博物館に持っていき、ヤブサメですとの返事をもらい、無事、標本として後世に名(ではなく、身)を残すことになりました。
ゴイサギの上腕骨骨折 (2001年10月1日掲載)
下に続いて翼の骨折の例です。
ゴイサギ成鳥の、上腕骨開放骨折(骨が折れて飛び出している)でした。
斜骨折(名前の通り、斜めに折れている骨折)ならピンニング(骨髄にピンを入れること)とワイヤリング(骨の周りに針金を巻き付ける)で治療しますが横骨折(断面が円になるような直角の折れ方)なのでピンニングと外固定(レントゲン参照、ピンだけでは骨どおしが回転運動をするのでそれを止めるため皮膚を貫通してピンを入れ、ピンどおしをレジン((セメントみたいなもの))で固定する)しました。
固定はしっかりしていましたが1ヶ月たっても骨はくっつきませんでした。開放骨折の場合、中にピンがあると感染が続くので良くないのです。犬猫では開放骨折ではピンは絶対入れないのですが、鳥の骨折は比較的早く直るので油断していました。
1ヶ月後に今度は2本2本の、4本による外固定のみにして骨折部位に人工物=ピンが存在しないようにし、局所を毎日洗浄したところ、やっと骨がくっつきました。
触診ではくっついていますがケージ暮らしが長かったので飛べるのかどうか、わかりません。小さな鳥では病院で練習できますがこのサイズの鳥になるとちょっと狭すぎます。
公園へ連れていき、足にひもを付けて飛ぶ練習を数日行いました。
少し斜めになりながらも結構な距離を飛ぶようになりましたので放鳥しました。
結局3カ月病院にいました。ウンコが魚くさくてたいへんでした。
カラスの中手骨骨折 (2001年10月1日掲載)
残念な例が続いたので (症例は新しい方が上に来ますのでこういう表現になってしまいます。初めての方は下から読んで下さい) 治った例も掲載しなくては。
ハシボソガラスの翼、手根中手骨の骨折です。場所はレントゲンをご覧下さい。
普通、こういう骨折はピンニング(骨髄に太いピンを入れる)にて治療します。
鳥では約3週間でくっつくようです。3週間後にピンを抜いてめでたく放鳥です。
右下は治ってピンを抜いたときのレントゲン
えこひいきはあかんけど、ハシブトガラスよりかわいいなあ。
いろんな本に、翼の骨折では翼と体全体に包帯を巻いて動かないようにして直すやり方を書いています。私は技術が未熟なためか、ギプスを巻いてもすぐにずれますし、しっかりした固定が出来ないので包帯による固定はしていません。解剖学的に全く元通りにしないと飛べない、すなわち野生に返れないと思います。
逆に、ペットであれば飛ぶ必要がないので私は治療していません。ゆがんでもそのうちくっつくと思います。麻酔、手術の危険性をおかしてまで固定する価値を飼い鳥では認めないからです。
このカー子では、比較的単純な骨折でしたので術後30日で放鳥できました。
ちなみに、放鳥の度に足輪をつけたい衝動にかられます。放鳥した鳥のその後を知りたいからです。でも、現在の所、こういうケースで足輪を付けることは出来ないようです。
きっちりした事は知りませんが現在、山階鳥類研究所が ”足輪事業” をほぼ独占しています。環境省から足輪を預かり、許可を受けたバンダー(カスミ網等で鳥を捕まえて足輪をつける人)に貸し出しているようです。私はバンダーでもありませんし、バンダーに知り合いがいても、山階鳥研は傷病鳥にバンドを付けることをいやがってます。バンディングの目的は健康な鳥の動きを見るためだからだそうです。
獣医師会独自で足輪を付ける許可を取り、追跡調査できればいいのですが。
ユビナガコウモリの中手骨骨折 (2001.9.23掲載)
大阪のコウモリを調べる会にてコウモリのバンディング調査をしています。この日はユビナガコウモリ約60頭にバンディングしましたが、私の不注意で1頭、骨折させてしまいました。
レントゲンでは単純骨折でしたのでピンニングを試みました。
麻酔はセボフルレンのマスクで行い、23G注射針を入れました。麻酔の導入、覚醒は順調で特にトラブルもありませんでした。
ミルワームを与えてみましたが食べませんでした。ネコミルクを注射器で与えるとすごくよく飲み、体重も増加傾向がありましたが残念ながら4日後に死亡しました。
ちなみに、ミルクは逆さまにぶら下がった状態の方がよく飲みました。
手術手技に特に難しい点はありませんが野生動物ではやはり、術後の管理、特に食事が難しいです。
ちょっと見にくいけど骨折部とピン 参考までに、コロニーはこんな感じ
ハシブトガラスの巣立ちヒナ(2001.9.23掲載)
病院のそばの小さな公園でカラスのヒナが落ち、近所の人たちで育てている、との情報がありました。
実はこの公園では1年前にも同じ事がありました。
1年前にも2羽のヒナが巣立ち後に落ちてきたのです。風切羽が正常に生えないため飛べないようでした。この時は1羽は新しい飼い主が見つかり、飼っていただきました。もう1羽は散歩中の犬に咬まれて死亡しました。人慣れしていたので犬も恐くなかったための事故でした。
行ってみると、焼きそばやご飯が並べられていましたが、人を見ると口を開けてガーガー鳴いていました。前例と同じく、羽がボロボロで飛べません。同じ親から生まれたのでしょうか。
一般的にいたんだ羽は抜かないと次の羽が生えてきません。前回の例ではほとんどの羽を抜き、新しい羽に期待したのですがダメでした。ちなみに新しい飼い主の元でもまともな羽は生えず、ピョンピョンはねて生活していたそうです。とりあえず近所の人と相談し(町内会のアイドル?になっていたので)、野良犬が恐いので病院で引き取ることにしました。
今回も一部の羽を抜いて様子を見ていたところ、新しい事件が起きました。この公園に”捨てカラス”が来たのです。カラスの巣ごとヒナが置いてあったというのです。こちらは羽は普通でもうすぐ飛べそうでした。
都合、3羽を保護しましたが犬舎を独占され本業に支障が出始めたため、最後のヒナをまず放鳥しました。水平には飛びましたが重たそうで大空を自由に、と言うふうではありませんでした。
その後、最初の2羽の引き取り手を捜しましたが見つからず、これ以上の飼育は困難と判断、かといって安楽死の選択も出来ず、カラスのねぐらになっている仁徳天皇陵に”放鳥”しました。
今も地面を走り回り元気に過ごしている、訳はないですかね。
1日エサをねだっている 止まり木がある方が落ち着く
羽のいたんだアオサギ (2001.9.23掲載)
上記と同様、羽のいたんだアオサギです。
池に飛べないサギがいる、との話が回り回って当院に来ました。行ってみると確かに、羽を下げたアオサギがいました。追いつめると捕まえることが出来ましたので病院へ連れて帰りました。
写真のように手根部が壊死しており、羽はほとんど軸だけになっていました。最初の原因は分かりませんがかなり長い間、この状態で生活していたのでしょう。
これも羽を抜いてしばらく様子を見ていましたが羽が生える様子はなく、病院での飼育も長期になってきたためこれ以上の保護は困難と判断、1カ月後に安楽死をしました。
サギはコサギ、アオサギ、ゴイサギの保護例があります。いずれもエサ付きは良く、よく食べます。ただし、魚食の鳥のウンコは臭いがものすごく、病院での長期飼育は大変です。また、サギ類は目を狙ってつついてくるのでかなり危険です。飼育していたフェレットの目をケージ越しにつつかれたことがあります。サギの保護はまずくちばしをコントロールし、気を付けて捕まえて下さい。
この例でも保護した時点での安楽死が妥当であったのかもしれません。
野生復帰の可能性を治療する、しないの判断材料とするならば、かなりの例が治療の対象からはずれてしまいます。これについては こちらも ご覧下さい。
鳥の吸入麻酔(導入) この後気管チューブを挿入 |
いたんだ翼 かなり時間が経過している |
おうちへ帰りたい・・・・・・・ |
鳥のコピー (2001.9.23掲載)
少し救護とは違った話題を。
死亡した鳥、死体でひらった鳥は仮剥製にして博物館に収めています。手元には測定データと写真が残るだけです。
今回は少し変わった記録方法を紹介します。鳥ごと、あるいは羽を広げてコピー機にかけてみてください。結構、きれいに記録が残せます。
ちなみにこの方法は酪農学園大学寄生虫学教室浅川先生がしておられるのをまねしたもので私のオリジナルではありません。