野鳥カルテ          


2002年 1−3 



2001年 9−12
2002年 1−3 4−6 7−9 10−12
2003年 1−3 4−6 7−9 10−12
2004年 1−3 4−6 7−9 10−12
2005年 1−3 4−6 7−9 10−12




ケリーの性別判明     3月27日
グロちゃん、放鳥!
    3月7日
ヒヨドリ             3月2日
お帰りなさい          3月1日
スズメ              2月19日

ツグミ              2月7日
グロちゃんの経過報告   1月30日 
速報、グロちゃん と ギーちゃんの訃報 1月25日 
”千客”さん、全滅?     1月16日 
ロビンちゃん、昆陽池に。 1月16日
オトバちゃん、ペットになれるかなあ。
ケリー、食費が大変。
ギーちゃん、断翼。
ロビンちゃん、ハシビロガモ
1月11日
千客万来 その2 
      1月10日
千客万来  
ケリ、アオバト、ハシビロガモ 1月8日





ケリーの性別判明 (2002年3月27日)

”てくてくおとくに” のキョロパパさんからメールを頂き、ケリの雌雄判別法を教えていただきました。キョロパパさん、ありがとうございました。

巨椋野外鳥類研究会が日本鳥学会で、ケリの翼角の所に爪状突起があり、雄では茶色から黒色をしていて大きさ5ミリ前後、雌は白色からうす茶色で大きさ2ミリ前後、という発表をされていたそうです。
うちのケリー、それによると、黒くて大きいので、♂のようです。何カ月も居候しているのに気が付きませんでした。始祖鳥の爪の様、と、スタッフが言ってました。

ちなみにケリーちゃん、上野動物園に連絡を取ったところ引き取ってくれる事になりました。大阪府の担当部署、緑の環境整備室に、正式に上野へ移送したいので関係書類を整えてくれるように依頼すると前例がない、とのことであわててました。学術捕獲に引き続いての飼育許可は出すそうです。その場合、手数料が3000円とか4000円だとかいう話でした。一般市民が傷病鳥を一時飼育する許可は出ないとか。私の認識では出るはずなんですが。さて、どうなるんでしょうね。

ちなみに日通が伝書鳩の輸送をしているので聞いてみましたが伝書鳩以外の生き物の輸送はできないそうです。ということは私が持っていく?。東京はこわいので生まれて40云年、行ったことがないのに。

*ケリーは3月31日、無事に上野動物園に旅立ちました。詳しくは 週末の院長をご覧下さい。


グロちゃん、放鳥!(2002年3月7日)

1月に骨折により保護され手術、2月は里子に出ていたグロちゃん、3月に再び病院へ戻り、本日大和川へ里帰りしました。
箱から出てしばらく羽ばたきの練習をしていました。結構風が強かったので逆に浮力を得やすかったと思います。風上に向かい走りながら羽ばたき、1mほど浮き上がって飛んだ後、川に浮かびました。カラスやユリカモメが鳴きながら周りを飛んでいました。やっぱり、普通と違う鳥と感じているのでしょうか。

川の中では一生懸命羽づくろいと羽ばたきの練習をしていました。体がやや沈み気味でした。ハシビロガモの時も同じで、撥水性は水鳥を長期飼育するとどうしても出てくる問題のようです。プール付きのリハビリ施設が必要です。
泳いでか、流されてか不明ですが下流に移動し、見えなくなりました。
今晩はどこで寝ているのでしょうね。

印象的に野生復帰の成功度、欲目に見て70-80%というところでしょうか。

麻酔してピンを抜く 久しぶりの大和川 風に向かって羽ばたく




ヒヨドリ(2002年3月2日)

道路にいた、とのことで保護されてきました。
外傷も骨折もなく、痩せてもいないのですが飛べません。
羽は動かすし足も物はつかみますが立てないでお腹で着地しています。運動神経がおかしい、この子もまた、脳の問題のようです。

注射と強制給餌で様子を見ていますが前途多難です。


お帰りなさい(2002年3月1日)

里子に出ていたケリーとオトバちゃんが養子先の都合で一時帰宅しました。
養子先ではほとんど放し飼いに近い状態で、ケリーは魚やザリガニ、オトバちゃんは野外のいろいろな種子をもらっていたようです。うちではミルワームとハトの餌ばっかりになりそう。
しばらくは辛抱してもらおう。

手術室側からの、犬舎の風景。居候で満室状態


スズメ(2002年2月19日)

道で拾った、ということで搬入されました。
7日のツグミと同じように上を向いていますが呼吸困難はないので、頭部損傷による神経症状のようでした。交通事故や窓への激突などでよく見られます。
治療し、一晩安静にしてると治るケースもあるのですが今回は残念ながら半時間ほどで死亡しました。

かなりやせていたので事故に遭う素因があったのかもしれません。



ツグミ
(2002年2月7日)

友人の紹介で連れてこられました。
上を向いて口を開き呼吸しています。酸素吸入し、落ち着いてから触診しましたら下顎が根本で折れていました。かなり呼吸困難があったので頭部から胸部の打撲、たぶん交通事故でしょう。
残念ながら翌日死亡しました。

まるまる太った、不謹慎ですがおいしそうなツグミでした。
確か、地方によっては食用に密猟されているのでは?。合法的な輸入も多かったはずです。
貴重な標本ですので仮剥製にし、博物館へ寄贈しました。

下顎骨折で口がしまりません。酸素ケージで様子見。




グロちゃんの経過報告(2002年1月30日 掲載)

グロちゃんを保護された方からHPのアドレスを知りたい、との連絡がありました。工場内で保護されているので、会社の皆さんに当HPを紹介し、経過を知ってもらうためだそうです。(社内報?回覧版?みたいなのに掲載されるのでしょうか?。)
ということでとりあえず、途中経過を掲載しておきます。

人でいうと手のひらの真ん中の骨です。 その拡大。 ステンレスのピンを入れています。

手術自体は自分でいうのもなんですが、何も問題なくきわめてうまくいきましたがさて、結果はどうでしょう。
どうしても関節にピンが入った状態で何週間か過ごすので骨がくっついても関節が伸びないときがあります。ペットであれば飛べなくてもいいんですけどセグロカモメはちょっとペットには向いていません。

肝心の餌付け、毎日アジを朝晩2匹ずつ強制給餌したところ、昨日は自分で1匹食べてくれました。この調子で食べてくれれば少し楽になりますが。
朝、ケージを洗うために院内を散歩後、ケージには自分でもどるようになりました。かわいいもんです。

速報、グロちゃん と ギーちゃんの訃報 (2002年1月25日 掲載)

セグロカモメの幼鳥が来ました。
またまた手根中手骨の骨折、しかも関節近くで複雑骨折。
すごく大きくて力も強い、おまけに攻撃的。かなり危険です。

通常は1日程度様子を見て、安定してから手術するのが望ましいのですが損傷が大きく、羽をブラブラさせていると骨折部がよけいに痛むのですぐに固定手術―ピンニングを行いました。手術、術後については後日記載します。

とにかく力が強く、治療に非協力的なので困ったものです。
うちのスタッフは前回のセグロカモメにつつかれて傷跡が残っています。強制給餌も一人ではとても無理ですし、骨がくっつくまでの3週間、いかにご機嫌を取るか思案中です。

グロちゃん、ギーちゃんのハウスに入っています。
ギーちゃん(コサギ)、1月23日に残念ながら亡くなりました。体重は減少傾向にありましたが少しずつ食べていましたし元気そうだったので安心していたのですが。
新居を探そうと思っていたところでした。

顔はかわいいけど気がきつい。 すーごく大きいです。 すーごく長い羽。




”千客”さん、全滅?
(2002年1月16日 掲載)

千客万来と喜んでいたら、同じ日にみんな野生復帰できないことが判明しました。アオバトは烏口骨の骨折(うこうこつ、人にはない骨。鎖骨みたいなのも)が判明、ハシビロガモはピンを抜いても羽を使えず、ケリは関節が固定化、コサギは断翼・・・・・。
骨折の成績は今まではそんなに悪くなかったのですが折れた場所、折れ方が悪かったのかもしれません。もちろん、腕が悪い、といわれればそれでおしまいですが。
 
各自の事情は別記の通りです。
 

ロビンちゃん、昆陽池に。(1月16日)

ハシビロガモのロビンちゃん、15日にピン(針金)を抜きました。骨はくっついていました、が、羽を下げています。関節が痛んだか、筋力が落ちたか。
これ以上の改善は望めないと判断、余生を過ごす場所として昆陽池を選びました。給餌されているし野良犬、野良猫の危険性が少ないと判断しました。まれに夏になっても羽が痛んだりして取り残されている渡り鳥を見ることがあります。後は自力で生きてもらうことを望むばかりです。

最初の頃、給餌の度に怒ってかみついてきていましたが最近はあまり抵抗しません。慣れたのでしょうか。陸の鳥ではないので一般個人の家庭では長期の飼育はまず不可能でしょう。

放鳥後、すぐに水に入り入念に身繕いしていました。他のカモにけんかを仕掛けたり、結構堂々とした態度でした。両方の羽を持ち上げて羽ばたきの練習もしていたので時間がたてば飛ぶ可能性も、という淡い期待を持ったのですが。
毎日ここに通っておられるおっちゃん、おばちゃんが多数おられ、事情を説明するとしっかりフォローしてくれる、とのことでした。なんせ、鳥の数もすごければ人の数もものすごい、ちょっとでもおかしい鳥がいればすぐに通報があるそうです。

帰る日。寂しそう?うれしそう? お友達にごあいさつ

 
オトバちゃん、ペットになれるかなあ。

アオバトのオトバチャンです。
最初のレントゲンで翼の骨折、肩の脱臼もなく、羽も下げていなかったので安静にし、2,3日で放鳥するつもりが今日、飛ぶ練習のため部屋に出してみると羽を使いません。麻酔後レントゲンを撮って詳しく見てみると烏口骨が折れていました。これは鳥独特の骨で羽ばたきにかなり関係している骨です。

体の奥の方にある骨なので整復はまず無理でしょう。すなわち野生復帰は完全に無理のようです。
幸いにも特殊な餌の鳥ではなく、飼育も難しくなさそうですので病院のペットになるか、新しい飼い主を見つけるか、ということになりそうです。
 
左肩に外傷があります。 ドバトの標本 ちょっと見にくいですか?


ケリー、食費が大変。

ケリのケリー(そのまんまやんか)、包帯をはずしましたら脱臼はしませんが関節が固まってしまっており、飛ぶことは不可能な事が判明しました。リハビリしても関節を伸ばすのは困難なほど固着しています。

おとなしいしそんなに大きくない鳥ですので飼育可能でしょう。
ただ、主に昆虫食ですのでミルワームをそのたびに買っていると餌代が馬鹿にならない。ミルワームの大量、自家繁殖が必要です。及び、ミミズ掘り。かなりの大食漢ですのでうちの庭は穴だらけ。もうすぐ掘るところがなくなります。
これも里子に出すか、ペットにするか思案中。
 
手術時の写真 左の羽が不自由


ギーちゃん、断翼。


コサギのギーちゃん、プレートを入れましたが骨が弱く再骨折、また、骨と周りの筋肉の状態がかんばしくなく、しばらく思案した後、断翼してしまいました。
ケージを洗うため外に出したりすると、あわてるとバランスがとれずに転倒していますが見た目は普通の鳥と変わりません。魚食の鳥なので糞のにおいが生臭くって大変です。

正直言ってこのまま飼い続けることが可能かどうか、極めて疑問です。断翼よりも安楽死が適当な選択だったかも知れません。実験的な意味もあって本人には悪いけど断翼手術してしまいました。さすがにこの状態では川に放すこともできません。

今ここで”安楽死しました”、とは報告しませんが闇に葬られる可能性も・・・・・・。

とう骨(細い方)と尺骨の骨折 骨折部 金属の板(プレート)わかりますか?
 



ロビンちゃん、ハシビロガモ(2002年1月11日掲載)
*種をあかせばくちばしの回りにビロビロの、すのこがあってロビンちゃんだそうな。*

下記の、12月21日の子です。
この写真だけクリックすると
大きくなります。
麻酔の様子。気管にチューブを入れて
吸入麻酔。
ちょっと見にくいけど
ピンを挿入しているところ。


手術後のレントゲン ずんぐりむっくりの体型 給餌風景。舌の形とビロビロ、わかります?

来たときはうずくまってほとんど歩けませんでしたが、最近は普通に歩くようになりました。来週、15-17日あたりにピンを抜く予定。飛べるかどうか、かなり不安です。飛べない場合、さて、どうしたものでしょう。
ペットとして第2の人生(鳥生)を過ごすのか、このままお友達の所へ帰ろうか、来週が待ち遠しいような、来て欲しくないような




千客万来 その2 (2002年1月10日掲載)

アオバトが来ました。
路上でうずくまってたそうです。容姿でえこひいきはいけません、が、とにかくきれいな子です。
箱の上から見る限り外傷もなく(鳥の初診の大原則は触らない、外から様子をまず観察)、脳しんとう程度かなあ、と思っていましたら口から吐血、すぐに酸素室に収容しました。
とにかく野鳥はかなり重症な場合でも平気な顔をしているので油断できません。
呼吸が落ち着いたら触診、レントゲン撮影の予定。なんとか、そこまで持っていけるように願っています。
続報にご期待下さい。

ちなみに今回のケースは大阪府緑の環境整備室さんからのご紹介でした。
ありがとうございました。うちもちょっとは名前が売れてきたのかなあ。

本物はもっときれいな色です。翼がちょっと気になっているのですが。




 
千客万来 (2002年1月8日掲載)

それぞれ、決着が付いてから掲載しようと思っていましたがあまりにもにぎやかなので途中経過を。


まず12月21日にハシビロガモ

泉大津で空から降ってきたそうです。友人の病院に来院したのをお預かりしました。一見、雌かと思いましたが雄のエクリプスできれいな雄に変わる途中のようです。
翼、すなわち手根中手骨の骨折です。3カ所折れていましたが完全に折れていた骨にだけピンを入れました。その後包帯。
以前、このページでテーピング(外固定としての包帯)はほとんどしない、と書きましたが研究会で仕入れてきた巻き方をすればほとんどずれないで極めて有効なことがわかりました。

ただ、困ったのはエサ。ハシビロガモはプランクトンイーター、すなわち名前の通り幅の広い嘴で水面をばしゃばしゃし、嘴の周りの簀の子のようなすだれでプランクトンを漉して食べているのです。川でプランクトンネットでプランクトンを集めるわけにもいかず、とりあえずヒナ鳥用の流動食を強制給餌、広めのバットにニワトリ用の飼料を浮かせています。本来は動物系の食事かもしれませんが1月7日現在、顕著な体重減少はないのでとりあえずの食事にはなっているようです。
1月7日のレントゲンでは固定はしっかりしていますが新生骨に乏しく、ちょっと翼を下げているので心配しています。

本人には悪いけどおもしろい顔です。
舌も嘴のように先で広がっています。嘴の周りには細かいすだれが下がっています。
尾羽は申し訳程度に。すごく短いです。

骨折のレントゲン、経過については落ち着いてから別に記載します。

こんな顔 ちょっと♂の色



1月2日はケリ

和泉市の友人からお預かりしました。
翼の解放性脱臼って言うのかな、脱臼した上に骨が皮膚から飛び出していました。整復して傷を縫合、急に得意になった包帯で固定しました。
すごくおとなしく、餌を与えるために捕まえるときもあまり抵抗しません。が、時々、あの甲高い声でキー、と鳴く事があります。
こちらも餌で困った。

どちらかというと昆虫食ですのでミルワームを与えればいいのですがかなりの大食漢、1日1パック以上食べそう。1パック200円、1ヶ月で6000円以上。
実はミルワームを自家繁殖させるつもりが冬なのでまじめに取り組まず、間に合いませんでした。この夏に試みたときは第2世代に行く前にダニをわかせてしまい失敗、つい面倒になってその都度購入に頼ってしまいました。これを機会にまじめに継代飼育を試みるようにします。

野鳥救護関連のHPをのぞいていたら毛虫を冷凍保存、というのがありました。ちょっとおもしろそう。来年はマネをしよう。

スマート 色鮮やかでとにかくかわいい



1月7日は
コサギ

HPを見てメールを下さいました。
豊中でしたので近くの野生鳥獣救護ドクターを紹介しましたら診療費がかかった上に引き取ってもらえず、連れて帰った、との連絡が来ました。
その後、その先生からも当方に連絡がありましたが、レントゲン等の高額医療(??)が必要だった場合、実費としていくらか(今回のケースでは2000円ほどだそうです)請求しているそうです。

救護ドクターとして登録している以上、引き取らないまでも無料診療は当たり前、という私の考えが甘かったようで、しっかり確認しなかった私にも責任があると思い、診療終了後引き取りに行きました。最初からもらいに行けば良かった。
ちなみに診療費については、大阪府から直接出ることになったようです。

無料で引き取るというのは私の勝手の判断で、そう言われてみると大阪府の関連HPには確かに、無料とは書いていないようですし、獣医師会からも無料で診ろ、との通達も正式にはなかったかもしれません。なら、救護ドクターというのは何なんだろう。もうちょっとしっかりした組織にしてほしいもんです。

と、文句を並べても仕方ない。
この子も翼の複雑骨折。骨折の写真と経過は後日掲載します。
プレート、すなわちステンレスの板のようなものを当ててネジで止めました。実費で4−5万円!。治ったら返してねー。


いわゆるシラサギ、品のある白ですねえ。